メモ・中国の発展

ゼミ受かりました!!
開発経済のゼミです^^来年度から頑張ります!
ゼミ面接の前提条件にレポートが課されたんで、
そこで書いた内容を転載^^
課題図書は丸川知雄さんの「現代中国の産業 勃興する中国企業の強さと脆さ」
内容はその要約…というより、そこから
「グローバリゼーションが中国に与えた影響」を読み取れ、ってもの。


(1)グローバリゼーションの、中国経済成長に与えた影響について
グローバリゼーションの影響は、中国の経済に対して概ねプラスに働いた。丸川は中国産業の垂直分裂という構造にその経済発展の理由を見出している(丸川2007年、p.14)。これについて、そもそも投資額が限られている地方政府の設立した中で、基幹部品を輸入しながら組み立てのみを行う工場を作るという形で最初の一歩を踏み出せた(丸川2007年、p.31)のは、モノの流動化というグローバリゼーションの側面の影響と言えるだろうし、垂直分裂という産業構造の中で外貨確保の必要性が生まれ(丸川2007年、p.33)、政府主導での基幹部品の国産化へのインセンティブを高め、垂直分裂による、コスト削減等への良い影響を拡大したのもグローバリゼーションの影響に依る物と考えられる。故に、グローバリゼーションは中国産業の発展を促進したと考える。
以下の文章で、より詳細に見ていく。
まずは、中国の経済成長自体について確認する。下図は、1975年から2009年までの中国のGDPとその成長率をグラフにした物である。

世界銀行ホームページ World databank より作成)
成長率を観ると、80年代前半に一度、急速な成長を実現するも、90年前後で一度失速、90年代以降は概ね安定的な成長を遂げていたが、サブプライム問題の起きた2007年以降は、それまでの様な、加速度的な成長は継続しきれていないものの、依然8%以上の高い成長率を維持している事が分かる。この成長を支えた要素として、丸川は中国製品の生産管理能力向上に伴う品質向上と、コスト削減の実現、販売網の構築での成功を挙げている(丸川2007年、p.12-14)。丸川は更に、それらを実現した背景として、中国が「垂直分裂」と呼ばれる産業構造の様態を形成した事を指摘している(丸川2007年、p.14-16)。垂直分裂とは、「従来一つの企業の中で垂直統合されていたいろいろな工程ないし機能が、複数の企業によって別々に担われるようになること」を指す(丸川2007年、p.14)。この垂直分裂の源流は1970年代より、家電製品の生産が始まった事に遡る。計画経済の下、白黒テレビ(70年代に始まる)や冷蔵庫、洗濯機、カラーテレビ(80年前後に始まる)の生産は、地方政府の投資で行われた国有企業が担った。しかし地方政府は投資額が限られていたため、設備費用のかかる基幹部品の工場を避け、最終製品を組み立てる工場の設立が先行した。結果、最終製品の組み立てが極端に先行し、基幹部品を大量に輸入し続けるという構造が生まれた。先述の通りそもそもこの構造を支えたのは、モノの流動化が高まった世界が故に実現できたモデルであろう。

上図は、中国の輸出額から輸入額を引いた値だが、ここから観ても分かる様に、70年代、80年代の中国の輸出入額は黒字ながらほぼ拮抗していた。丸川は、当時の中国は「輸出大国ではなく、外貨が貴重」(丸川2007年、p.31)であった為、この最終製品の組み立て先行の構造は是正しなければならなかったと論じている。これは暗に、外貨を獲得しなければその国の経済が成立しないという事を表しており、これもグローバリゼーションの影響の一つである、と言うことができる。そして、そのインセンティブから中央政府自らの投資で基幹部品工場が設立されたのである。(丸川2007年、p.31)
ところで、グローバリゼーションの影響を可視化する為に日本の高度成長期との比較を行う。そもそも日本企業では伝統的に垂直統合が志向されていたが、これは、製品の品質を武器にして市場に売り出した事実があるからであり、その為には品質を左右する基幹部品は社内で生産する必要があったからである(丸川2007年、p.59)。その戦略で日本が先進国として台頭することが出来たのは、グローバリゼーションの進展が進みきっていなかったからに他ならない。これはソニーのカラーテレビ生産(丸川2007年、p.48を参照)に見られる事であるが、情報の流動化が少なく、また、技術的には競争相手も少なかった1960年代に於いては、品質の良し悪しで世界に挑む、という事が可能だったからなのである。そしてその時代に於いては、製品の品質での勝負に適した、垂直統合という構造が適していたのである。一方で現代はというと、グローバリゼーションが進展し、モノや情報の流動化が高まり、品質での勝負で開発のコストを回収することは、依然に比べて困難になっている。更に、技術進歩によって物流コストが低下している今、国内市場であっても世界中の国々が“競争相手”となるのである。まして途上国である中国にとって、技術力で売り出す事のメリットは薄く、工業製品については価格面での勝負をすることを強いられているのである。この事は中国にとっては寧ろプラスに働いた。価格での勝負を強いられるということは、中国に定着していた垂直分裂という構造になじみ、更に「オープンな垂直分裂」を促進し、より安く部品を調達できる企業と契約する、という構造を創出するインセンティブを増大させ、結果的に対外的な競争力を増大させる事となったのである。この価格面での勝負は、テレビに於ける日本と中国の価格帯での棲み分けの現状にも見られるように、比較的高価な外国製品を市場から「締め出す」ことも可能にし、中国製品の販路拡大にも寄与したのである(丸川2007年、p.52)。以上のように、中国の計画経済という制度の存在が発端となった垂直分裂という産業構造と、グローバリゼーションの影響が相乗的に作用し合い、中国経済は躍進を遂げたのである。ただし、こうして成長を遂げた中国経済が「先進国」に入るには、後発性の優位に甘んじているだけではない(丸川2007年、p.74)。その為には、垂直分裂した産業構造下での価格競争だけでなく、企業に体力がつき次第、先進国で埋もれてしまった技術等を発掘し直し、それを発展させる、という様な商品開発の戦略も必要になってくる、という点で、このグローバリゼーションとの相関の中で生まれたこの産業構造が、今後の中国の発展の足かせとなる可能性は否定できない。